第12章 【明智光秀】愛、故の戯れ②【R18】
~後日談~
あれから月日は流れ、桜姫と光秀もだいぶ普通の恋仲に見えるようになってきた。
相変わらず光秀の神出鬼没具合は変わらないが、桜姫と仲睦まじい姿も見られるようになり、信長もご満悦の様子だ。
「こらっ、こんな所に小石を並べたのは誰だっ!」
中庭に続く縁側に響く秀吉の声に、植木に身を潜めていた桜姫と三成はクスクスと肩を揺らす。
最近の桜姫は、いつか光秀をぎゃふんと言わせてやるのだと張り切って武将たちに自称『意地悪』という名の悪戯を施していた。その作戦を聞いた三成もそれを手伝い、一緒に怒られるという流れを何度か繰り返している。
「桜姫、何度言ったら分かるんだ。もういい大人なんだから悪戯はやめなさい。三成もいい加減にしろっ」
誰がやったのかと聞きつつも、誰がやったかなんて明白であるその悪戯にはほとほと困らせられていた。大きなため息をつき、悪戯の後片付けをするように言いつけた秀吉は、今日も見当たらない桜姫の保護者を頭に浮べる。
「何をしている?」
唐突に現れた保護者もとい恋人の光秀に事の次第を捲し立てた秀吉。
意味深な笑みを浮かべた光秀は、片づけを終えた桜姫を手招きして呼び寄せた。
「光秀さん、おかえりなさい」
桜姫を引き寄せ、額に唇を落とし彼女へ何やら耳打ちをする光秀を訝し気に見つめる秀吉は、苛立ちを更に増幅させる。
「光秀、いらん知恵を桜姫に与えるな」
「なに、いらん知恵ではない。安土で生き抜くための戦略だ」
「それは素晴らしいですね。光秀様、ぜひとも私にもご教授ください」
「三成っ、お前も乗っかるんじゃない」
仕事をするから付いてこいと言う秀吉に連れていかれた三成に手を振った桜姫は、恋人の帰りをもう一度喜んで出迎えた。
「いい子にしていたか?」
「はい」
今日も安土の中は、桜姫の悪戯が微笑ましくばら撒かれるのであった。