• テキストサイズ

人生は常に事件に満ちている【コナン】

第12章 緋色の和解 【安室】


「後は、君の洞察力や推理力と、ベルツリー急行で〝彼女〟を殺そうとしなかった点、かな」
「待ってください、貴女も、あの列車に?」
「えぇ、裏方としてね。まぁ私はほとんど何もしてないけど」
「…」
安室の眉間に僅かにしわが寄る。欺いていたと思っていた相手に欺かれていたと知り、複雑なのだろうか。
「でも私にも疑問点があってね」
「なんでしょう?」
「どうやって、私がFBIだって知ったの?」
彼には苗字しか教えていなかったはずで、当然仕事や住まいも彼は知らないはずなのだ。
「コナンくんにきいたんですよ。青黛さんの下の名前は何か、って」
「あぁ、さすがにフルネームわかれば…いや、わからないわよね?」
いくら公安の情報網でも、FBIの個人情報をそう簡単に知れるものではない。安室は少し眉を寄せると、その言葉を呟いた。
「…赤井が、呼んでいたんですよ、電話で。〝十華〟って」
「…あぁ…」
残念な事に納得してしまった。組織に潜入している時に、電話で名を呼んで、たまたまそれを安室が、バーボンがきいていたというわけだ。
「…正直、貴女がFBIだとわかった時、絶望しました」
「…」
「〝あの男〟と同じ、FBI捜査官…」
あの男とは誰か、など訊く必要はなく、彼女の頭の中にはすぐに身近にいる彼の姿が浮かんだ。元々組織にいた頃も折り合いがよくなかったらしく、またとある一軒から、憎しみを抱いているのだという。組織にいた頃のことは、十華も詳しくはきいていない。
「…でも、それでも拭えきれないものも、あったんです」
「…だから、あの言葉を?」
「えぇ…」
〝明日の行動にはお気をつけて〟という忠告の言葉。それは十華にも危険が及ぶ可能性があることを示した言葉だった。来葉峠に行ったのがジョディとキャメルではなく十華だったのなら、あそこで追われるのは十華だったのだから。
「…実はね、私も同じ」
「え?」
ふっと十華が安室に苦笑を向ける。
「わりとはやいころから、君がバーボンだって知ってたの」
「え…」
「でも心のどこかで〝別のもの〟も期待してて…。君を知るたび、もしかして、って思うようになった。君が公安の、こちら側の人間だって確証ができて…安心したわ」
「……」
「FBI(私達)に協力しろとは言わないわ。私達も極秘の操作だし、安室くんはまだ組織の人間でもあるからね」
でも、と十華は続ける。
/ 57ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp