第11章 緋色の真相 【安室/公安男】
「私は沖矢昴に初めて会った時に気づいたのよ。彼が秀一だって」
「だったら、なんで教えてくれなかったのよ!」
「そりゃあ…」
「ジョディ、さっきも言っただろう。敵を欺くにはまず味方からだと…」
「そ、それはそうだけど!」
十華の返答を代わりに答えるかのように、沖矢昴の姿の赤井秀一が、彼本来の声で言った。どうやら先にも同じことを言われていた様で、これがやつあたりのようなものだと十華は判断した。
「けど来葉峠の一見は知らなかったから、それは沖矢昴の招待がわかってからきいたのよ」
「じゃ、じゃあ昨夜のことは!?」
「あれは安室くんが…」
「安室透、ですか?」
訊ねたのはキャメルだった。十華は間をおいてちらとジョディとキャメルを見る。
「?」
「安室くんに、一昨日の別れ際、明日の行動にはお気をつけて、って言われてたの」
「それって…明日行動を起こすから、ってこと?」
「そうとって、こうして、ね」
肩をすくめてみせると、ジョディは少し唸った後、大人しくなった。
「それじゃ私、これから行くとこあるから」
「え?十華は話きいたの?」
「きいたも何も、メールが来た時いたし」
組織に潜入を続けている水無怜奈から届いたメール。〝RUM〟というアルファベット三文字のメールだ。RUMはボスの側近だと言われている者のコードネーム。いよいよ大物が動き始めているということだ。
「状況は大体把握してるから。それじゃ」
「え、えぇ」
まだ若干戸惑いを残すジョディとキャメルを尻目に、十華は工藤邸をあとにした。