第6章 予期せぬ再会 【安室】
その時、容疑者候補が絞り込められたという情報が耳に入り、真純は現場へと向かった。
(…ごめんね、真純…)
兄が大好きで、得意の截拳道も兄から教わった真純。兄の死を受け入れられずにいるのだろう。十華はその少し寂しげな背中を見つめながら、もう一度小さく「ごめんね」と呟いた。
その後の状況を、十華は離れたところで見ていた。関西と関東の〝言葉の違い〟を上手く使い、見事犯人をあぶり出したコナン、もとい、工藤新一。彼の着眼点は、関西人である平次では思いつかないところにあったようだ。だがこれは関西人である平次が犯人が関西人であることを導きだし、江戸っ子である新一が犯人をあぶり出したからということで、勝負は引き分けでいいのではないかと真純は言った。十華は複雑な心境で真純を見ていたが、不意にスマホが鳴ったのでそれに応じた。
「はい」
『十華?今どこ?』
「外だけど。私バイクあるから大丈夫よ?」
キャメルを迎えに来たジョディの電話に応答すると、『そうじゃなくて』と返って来た。
『キャメルが、現場で見た見覚えがあるような気がする子を十華が知ってるようだって言ってたのよ。私もなんか気になっちゃって』
「あぁ…真純のことね」
ちらと彼女を見る。こちらには気づいていない様だが、念の為少し離れた。
「ちょっとしたことで知り合った子よ」
『ちょっとしたことって何よ?』
「大した事じゃないって」
『…何か隠してるんじゃないでしょうね?』
しつこい、と正直思ったが、変に突っぱねると逆に怪しまれるだろう。
「本当に大したことじゃないのよ。強いて言うなら…妹分ってだけで」
『妹分?それでちょっとしたってことでって、矛盾してない?』
「気のせい気のせい。それじゃ、もう帰るから、切るわね」
『ちょっと十華!』
ピ、と一方的に通話を切る。おそらく赤井は真純の存在をジェイムズにしか話していない。恋人だったジョディにも話していないという事は、〝そういうこと〟なのだ。だから自分が勝手に話すわけにはいかない。赤井のためにも、ジョディのためにも、何より真純のために。ふうと一息ついて、十華はヘルメットをかぶった。真純の今後を心配しつつ、彼女は帰路につくのであった。