第6章 予期せぬ再会 【安室】
(もしかして真純、秀一の…)
そこまで思って、首を振った。今考えても仕方がない。また後で話す機会は来るだろう。とりあえず、彼女をこちらの領分に入れないことだけは確実にしなくては。
「青黛さん」
「ん?何?」
不意にキャメルが身をかがめて十華に耳打ちする。
「彼女、何物なんですか?お知り合いのようですが…」
「…ひょんなことで知り合った子よ。どうしたの?」
「いえ…何か、見覚えがあるような気がして…」
言ってキャメルはもう一度真純を見た。十華も真純をちらと見て、「さぁ、気のせいじゃない?」とキャメルに返した。
(そりゃ見覚えがあるでしょうよ…二人、そっくりだもの…)
十華は今は見る事の無い〝彼〟を思い、「今はこの事件解決に集中しましょ」とキャメルの背中を叩いた。
事件は探偵達の推理によって解決に進んでいた。キャメルがきいたという声を平次がカンサイベンに言い直すと、キャメル以外がはっと気づいた。
「お前が毒を盛った、ってことね」
「え?でも自分と言っていましたよ?」
「関西弁で言う〝自分〟は〝Me〟ではなく〝You〟なのよ」
日本語って難しいわよね、と笑うと、キャメルは「はぁ」とだけ返した。日本で生まれ育った十華はテレビなどで関西弁を知っているが、アメリカで日本語を学んだキャメルには、いわゆる標準語としての認識しかできなかったということだ。これにより、死んだ男が自殺を宣告したのではなく、相手に自首を勧めていたことが判明した。さらに、平次がキャメルに問いかける。
「ちなみに、〝阿部ちゃんに毒を盛って〟の〝盛って〟が〝塗って〟にきこえたんとちゃうか?」
「あ、あぁ…でも人に毒を塗るのは変だと思って…〝盛って〟ときき間違えたんだと…」
「せやったらその阿部ちゃんは人の事やない…アメちゃん、飴玉のことやで!!」
〝阿部ちゃん〟と〝飴ちゃん〟は発音が似ているからきき間違えたのだろう。なるほどと十華は腕を組んで感心した。
「確かに、なんでか関西の人って〝飴ちゃん〟って言うわよね」
「そうだよね」
はは、とコナンが乾き笑いを漏らした。だがこれで一気に犯人が絞れるようになった。