第10章 Reincarnation 〜織田信長〜
「やっぱり、生まれ変わりなんて無理があるよね」
信長様のあの言葉だって、今となっては私を諦めさせるために言った言葉に思えてきたし…
タイムスリップした事も、信長様たちと実際会った事も、全てが夢だったんじゃないかって思い始めながら今日も再提出をくらったレポートを手にキャンパスを歩く。
「……おい」
背後から誰かに呼び止められた。
「はい?」
何気なく振り返ると…
「………っ」
「この論文、貴様が書いたのか?」
驚きの余り固まってしまった私に構わず、彼は広報誌を片手に私に尋ねた。
「………っ、遅いよ、もう…来ないんじゃないかって…何度も…」
涙を流す私にあなたはきっと「笑え」と言うんだろう。でもこれは悲しいからじゃなく嬉しいから。
「伝えたい事がたくさんあるの」
500年前に伝えられなかった思いを、たくさん伝えさせてほしい。
「あと、話したい事もたくさん」
あの時の二人には叶えられなかった未来を、これから先の未来の事をたくさん話したい。
「……っ、信長様」
「…の、生まれ変わりと言った方が正しいな」
彼はクシャッと、顔を綻ばせた。
「私の事…覚えてるの?」
「覚えてると言うよりは、思い出すように頭に浮かぶと言う方が正しい。だがずっと貴様を探していた」
「…っ、遅いよ。……っ、もう夢だったんじゃないかって何度も思って…」
「その泣き顔も記憶にはある。遅くなってすまなかった」
躊躇いがちに伸ばされた手は、私を優しく抱き寄せる。
あの日、私を抱きしめてくれた腕だ。
「信長様」
「だから、今はもうその名ではない。貴様も空良ではないのと同じだ」
「っ、じゃあ今の名前は?」
「そんなものは後で教えてやる。とりあえず、再会の挨拶をさせろ」
「え?…………んっ」
はっきり言えば、彼は初めて会った人。
そんな人と私は今、大学のキャンパスでキスをしている。
でも私達は結ばれる運命なのだと500年前から決まっていた。
長い長い時を経て、私達は生まれ変わり今日ようやく巡り会えた。
まるでずっと探し続けていたパーツが合わさるように、私達はいつまでも長くて甘いキスをした。