第6章 不穏
ここ数週間、組織の任務で忙しく、ポアロへの出勤も平日のお昼などが多かったためみなとには会えていない。
セーフティハウスの隣に住んでいるのだからいつでも会える。
落ち着いたら連絡しようと軽く考えていたのが不味かった。
その日はスマホを触る余裕もない一日で、やっと確認できたのは夜も明けるかという時間だった。
ベッドに横になり、スマホを確認すると一件の不在着信が入っていた。
突然電話がかかってくるなど今までなかったため、胸が騒つく。
そうは言えど、まだ数日は組織関係で動かねばならず、彼女に下手に近付く訳にはいかない。
電話の他にメールなどは来ておらず、また何かあれば連絡してくるだろう、と目を閉じた。
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「安室さーん、代わりますんで休憩入ってください!」
食器を片付けていると梓さんに声をかけられる。
女子高生の会話が耳に入った。
あの制服は蘭さんと同じ…ということはみなとの生徒か、と自然に耳を傾けていた。
「ねぇ、最近藤峰先生元気なくない?」
「だよね、お昼誘ってもダイエット中だからって断られるしさー。」
「あれ以上痩せたらヤバくない?あれかな、好きな人ができたとか!」
「いや、あれ痩せたとかいうレベルじゃないよ、なんかやつれた?みたいな。」
「C組の佐藤がさ、学校の近くのスーパーでバイトしてるらしいんだけどさ、先生いつもそこで夕飯とかの買い物してたらしいの。だけど最近全然買い物に来なくなったらしいよ?」
「スーパー変えただけじゃないの?」
「そうかもしんないけどさ、あんなけ痩せてたら夜も食べてるか怪しいもんだよ。」
「なんか心配だね、、」
「うん……」
みなとが痩せてご飯を食べていない……?
何よりも食べることが好きな彼女が?
ふと先日の着信が気になり、スマホを確認するも何も連絡は来ていない。
何か嫌な予感がして電話を掛けてみるも繋がらず、嫌な予感は増すばかりだった。