ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第13章 別れ
廊下に誰も居ない事を確認した私は大急ぎで
隠していたメイド服に着替え変装した。
そして机に恋文・・・ではなくあらかじめ
書いておいた『遺書』を置く。
内容は要約すると
『今まで何も知らず親に言われるまま生きてきた。
だが、道具のように扱われ、監視される日々に疲れ果てた。
このまま使い潰されると思うと絶望した。
今回の侯爵家との縁談でもう限界が来たので死にます。
どうか最期くらい自由に死なせて下さい』
・・・といったものだ。
これで一応私が親に道具として扱われた末の
遺書である事がわかるだろう。
というより『死んだ』と思われる為のものなので、
私が世間にどう思われようが二の次だ。
さて脱出を・・・と思った所で、『バンッ!』という音を
皮切りに階下が騒然となった。
恐らく憲兵団の突入だろう。
大人数がバタバタ走る音や怒号、悲鳴などが聞こえる。
私も急いで部屋を出ようとしたが、
「退け!退け!」と廊下を一直線に走ってくる
足音が聞こえて来た為、冷静に物事を見極める
必要性を感じ踏み止まった。
数秒もしない内に部屋の扉が乱暴に開け放たれ、
一人の憲兵が入室して来る。
私はメイドの振りをしながら、その憲兵に頭を垂れ
「何事でしょうか?」と怯える仕草をしてみせた。