ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第12章 取引
「待ってくれ。君は事が済んだらダリウス氏の店に
戻るのではないのか?」
「いえ、ダリウスさんにご迷惑が掛かるので
そのつもりはありません」
「では、どこに?」
「それは・・・・」
一応プランはあるが、法的にグレーな事に
なりそうなので軍人であるエルヴィンさんに
言うのも憚られる。
教えなければエルヴィンさんは『何も知らない』を
どこでも通せるので、片棒を担がせるような真似は
出来ない。
「それはエルヴィンさんにも言えません。
エルヴィンさんは『・カプレーティの居場所に
心当たりは一切無い』を通して頂きたいので、
ご理解下さい。これはお互いの為です」
心配してくれるのは本当に嬉しいが、
エルヴィンさんの足を引っ張るような事が
起こったら大変だ。
そう伝えるとエルヴィンさんは何か言おうと
一度口を開きかけたが、すぐにぎゅっと口を閉ざし
「そうだな」と頷く。
納得してくれたエルヴィンさんに安堵しながら
踵を返して「さようなら」と歩き出そうとするも、
大きな手に手を握られ振り返った。
意志の強そうなエルヴィンさんの瞳と目が合うと、
握られていた手に力が込められたのがわかった。
「憲兵団が屋敷に踏み込む際、必ず私も同行する。
だから絶対馬鹿な事は考えないでくれ。
遅れてしまっても必ず君を迎えに行って、
君を安全な場所まで逃がすから・・・っ!
ここまでしてくれた君に恩を返さず、何もかも
全部君に背負わせたくはない。困ったら必ず
私の所へ来てくれ。いつでも君を歓迎する」
真摯なエルヴィンさんの言葉が私の中に響く。
一瞬勘違いしてしまいそうになったけれど、
あくまで情報提供者を保護するという事だろう。
宣誓の力強さが格好良すぎて、
私はエルヴィンさんに頼りたくなってしまったが、
ぐっと踏み止まる。