ロミオとジュリエットは何故不幸になったのか【エルヴィン】
第14章 逃亡先にて
「いっぱい洗剤があるが、これとこれはどう違うんだ?」
見れば掃除用洗剤を両手に持っていて難しい顔を
していたので、我に返り接客モードに入った。
「こちらは主に窓ガラスに使用すると綺麗になります。
こちらは浴室などカビが生えやすい場所に使うと
カビの発生も抑えられます」
兵長さんは凄く真剣にその説明を聞いて
「こっちのは?」と次々洗剤を手に取る。
説明を受けた洗剤を手に取り無言でそれを買い物かごに
入れる度、四人の部下らしき兵士達がビクッと
身体を強張らせていたような気がするのは
気のせいだろうか?
大半の洗剤の説明を受け買い物かごに入れた兵長さんは
徐に私の顔を見遣るとポツリポツリとエルヴィンさんの
話を始め、暴露話のような内容に私は驚いた。
「・・・エルヴィンは、あぁ見えて私生活がだらしねぇ。
時々誰かが掃除を促さないとそのままだ」
「意外です。何というか・・・キッチリしているように
お見受けしていたもので・・・」
「仕事はねちっこいくらいにキッチリしていやがる。
が、休みの日は本を読んでいるか寝ているかのどっちだ。
正直、ゴミの溜まった部屋で平然としていられる神経が
わからん」
「はぁ・・・」
何故こんなプライベートな暴露話を私に
してくれるのだろうか?
もしかして遠回しに「エルヴィンは諦めろ」と兵長さんは
言っているのだろうか?
それならば私は迷惑になりたくないので追わないし、
このままで良いと思っている。
・・・影からコソッと見守るくらいは許して欲しいが。
「おまえ、元お貴族様なのに掃除や洗濯は出来るのか?」
「え?あ、はい勿論です。普通に暮らせていると
思いますが・・・」
まるで姑のような事を言うなぁ・・・などと酷く
失礼な事を思っていると兵長さんは「そうか。頑張れよ」と
話題を打ち切り、買い物かごに入れた物の精算を
するように促してきた。