第3章 原作編《入学〜USJ》
紫沫SIDE
右手が暖かい。
この暖かさは知ってる。
お母さんの手とは違う。
暖かくて優しい手。
「…」
「起きたか…?」
目を覚ますと目の前に轟君がいた。
「と、どろ、き、くん…?」
「ああ」
やっぱりこの手は轟君の手。
あったかくて、やさしい。
「て…」
「なんだ?」
「手、あったかい…」
「…」
「もう…はなれないで…」
なんだか、頭がぼーっとしてて
瞼が重い。
「…」
沢山お喋りしたいのに
意識が遠のく。
「…まだもう少し寝てろ」
「……うん」
そして私は再び意識を手放した。
「…ここは…」
「お目覚めかい?」
「…リカバリー、ガール?」
「お前さん、"治癒"を使って倒れたんだよ」
前みたいなキャパオーバーを起こさないからって、油断していた。
あんな非常事態で周りにとんでもない迷惑をかけてしまったことにとてつもない罪悪感が襲う。
「…ご迷惑おかけしました」
「私は何もしてないさね。あんたは私の"治癒"じゃ治せないからね」
「えっと、私はどうやってここに…?」
「轟が連れてきたんだよ」
「え…?」
「念の為病院での検査資料を見せてもらったら、"治癒"を使うとあんた自身の体温が奪われるらしくてね、その場にいた轟が"個性"であんたの体温を上げてくれたんだよ」
また、助けられてしまった。
あれから"治癒"を使う事がほぼなかったからどうなるかわからなかったけど、やっぱり体温が関係してくるのか。
「さて、もう起きられるかい?」
「あ、はい。もう大丈夫です」
「もう他の生徒は皆下校してる。明日は臨時休校だそうだから、家に帰ってゆっくり休むんだよ」
「はい…あ!あの、相澤先生はどうなりましたか!?」
相澤先生に"治癒"をしていた事を思い出し、リカバリーガールから命に別状はないと大まかな話を聞いてから私は保健室を後にした。
(そう言えば、一回目を覚ましたような気がするけど、気のせいだったかな…)
ぼんやりとした記憶だから、それが現実なのか定かじゃなくて。
「何だか、右手が暖かい気がする…」
これもまた本当にそんな気がするだけ。
それでも、その暖かさは心に残る心地よさを感じた。
帰り支度をして職員室に向かうと、睡さんがいたのでそのまま一緒に帰る事になった。
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