第12章 原作編《デクvsかっちゃん》
爆豪SIDE
雪女が俺の目の色が変わったのかと言った時、以前見せた目に宿る半分野郎の影がない事に気付いた。
俺を俺として見つめる眼差しに、これまで感じていた雪女に対する気に食わなさが解消されていく感覚を覚えて。
それが「奪いたい」という欲求からくるものだと自覚し、何処までその瞳を俺で覆い尽くせるのかに興味が湧いた。
「待っ…」
「うるせえ」
それを確かめる為に限りなく距離を詰めていき、行き着く先にある行為が脳裏を掠める。
それについて特別興味を唆られはしないが、一般的な好奇心は持ち合わせていたのか流れでそれも奪ってしまおうとした矢先。
ギュッと閉じられた瞳を見て、何かが違うとその先の行為に足踏みをして。
俺は雪女に触れたい訳じゃねェ。
そう悟った。
「ふがっ…」
「ハッ、バァーカ」
「な、何する」
「目閉じてんじゃねぇよ。見えねェだろが」
「え?」
瞳が閉じられてはそこに何を映しているのかはわからない。
求めるものは雪女の瞳が俺を映していることだ。
「あの、一体どう言う…」
「あ?わかンねーのかよ」
「いや、わからないことだらけなんだけど…?」
「…まァ、だろうな」
「えと、さっきから一体何の話?」」
視線を向けるクセに俺を映していない瞳が心底癪に触っていた。
しかし今し方閉じる前の瞳には間違いなく俺が映っていた。
そうと分かれば瞼を閉じる原因となった触れ合いなど必要ない。
「誰が教えてやるかよ。これまで散々ヒトをムカつかせた報いだわ。精々悩みやがれ」
「意地悪だ…」
この瞬間、半分野郎だけでなくなったのなら。
これから先も向けられる視線に俺を映し続けさせればいい。
「取り敢えずもういい。そろそろ部屋戻ンぞ」
「え?ちょっ…」
「…オールマイトの件に関してはもう気にスンナ。俺だって整理すんのに時間が要ンだよ。それから…」
その為に半分野郎の存在は無視できない。
「次、てめェになんかあった時は俺が救けてやる。半分野郎にやられっ放しは腹の虫が収まらねぇ。だからよォ、二度と前みてぇな目すんじゃねぇぞ」
「だから、それってどういう」
「じゃァな。相澤先生に見つかる前にさっさと部屋に戻れよ、雪女」
以前の様な名前を呼ぶ手段は使わなくていい。
仮にもしまた俺が雪女の名前を呼ぶとすれば……
多分そんな時は二度来ないだろうと言う結論に至った。
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