第12章 原作編《デクvsかっちゃん》
紫沫SIDE
「けどなァ、神野の一件でなんとなく察しがついた。ずっと考えてた。オールマイトから貰ったんだろ。その"個性(ちから)"」
爆豪君の言葉に我が耳を疑った。
"個性"というのは親から受け継がれるもので、他人から貰えるなんて聞いたことがない。
体育祭の時に焦凍君が「オールマイトに目をかけられてる」と言った時に"個性"が似てるとは思ったけど。
「敵のボスヤロー、あいつは人の"個性"をパクって使ったり与えたりするそうだ。信じらんねえが、プッシーキャッツ(ねこババア)の一人が"個性"の消失で活動中止したこと。脳無とかいうカス共の"個性"複数持ちから考えて…信憑性は高ぇ」
続く爆豪君の話や口振りはそれに足る説得力があって、一概に有り得ないと否定する気持ちを蹴飛ばされた気がした。
「オールマイトとボスヤローには面識があった。「"個性"の移動」っつーのが現実で、オールマイトはそいつと関わりがあって、てめェの"人から授かった"っつー発言と結びついた。オールマイトと会って、てめェが変わって。オールマイトは力を失った…てめェだけが違う受け取り方をした。オールマイトは答えちゃくんなかった。だからてめェに聞く」
話が進むにつれて緑谷君の顔は歪み視線を外す様にして下へと俯き、爆豪君の問いに対して歯を食いしばり無言で返している。
その反応全てが隠し事がバレてしまったと体現している様で、爆豪君の言っていることは全て正解で…
私はこの話が事実だと認めざるを得なかった。
「否定しねェってこたァ…そういうことだな、クソが…」
「聞いて…どうするの……?」
「てめェも俺も…オールマイトに憧れた」
互いに同じ「憧れ」を抱いてる事は承知の上で、わざわざそれを改めて提示している風な言い方。
No.1ヒーロー・オールマイト。
ヒーローが活躍するこの世界でその人に「憧れ」を抱く事はそんなに珍しくはない。
寧ろ良くある話で、幼い頃なんかは特に大人気だったし私も少なからず憧れを抱く時期はあった。
しかしそれは雲の上の様な存在としてという前置きがあって、そこに思い入れみたいなものはあまりなくて。
歳を重ねるに連れ、「平和の象徴」としての存在認識に変わっていた。
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