第11章 原作編《仮免試験》
no SIDE
「業くんはこの後どうしますか?」
「僕は相方と合流する予定だから、トガとは此処でお別れだね」
業の言う相方とは敵連合に加入する際には共に訪れ、その後も当たり前のように隣に並び立っているのを目にする人物のこと。
これまでそれについて特段詮索をしてこなかったが、ふと気になり聞いてみたくなった渡我は再び問いかけた。
「2人はいつから一緒にいるんですか?」
「1年位前、かな?」
正確な期間を把握していなかったのか曖昧な口調で返ってきた答え。
行動を共にし始めたのはそれ程前では無く、捉え方によってはつい最近のことだ。
ならばそれより前は1人だったのかと続けて質問するも、それはまた今度とはぐらかされたことで話題は長続きしなかった。
「今日は誘ってくれてありがとう」
「業くんとはお友だちなので、また誘っても良いですか?」
「もちろん」
「嬉しいです!また一緒に遊びましょう!」
渡我は独学で覚えたというには見事な身のこなしで瞬き一つの間に気配を眩ませその場を去った。
二人がいたのは1-Aが仮免試験を受けた会場のほど近く。
ついさっきまで、二人はその会場の中にいた。
渡我が「遊び」と称したのは、仮免試験に潜り込んである人物と接触をする事。
それに誘われた業は渡我のいう人物に興味はなかったものの、雄英の生徒が集まる場となれば気になる人物が1人いたなと。
「遊び」に付き合うことにしたのだった。
敵連合としては現在(いま)は身を潜めていろと言われていたが、不特定多数が集まる場で変装でもすれば早々気づかれる事はないだろうと踏んで。
特定の人物と遭遇する可能性は高くはないとあまり期待はしておらず、文字通り遊びに行く軽い気持ちで赴くも、案外あっさりと目的は果たされた。
「さて、荼毘の方は片付いてるかな」
新たな目的地へ向けて。
渡我とはまた違うその技術は正しく敵として過ごしてきた月日が短くは無いことを伺える自然な身のこなしで、息をするように気配は暗闇へと溶け込んでいく。
こうして、渡我と業の「遊び」は誰にも気づかれることなく終わりを告げ、2人は再び裏の世界に姿をくらましたのだった。
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