第2章 中学生編
紫沫SIDE
必死だった。
考えて言葉を選ぶなんて事が出来なくて、思ったままの事をそのまま口にするので精一杯だった。
「好きなの…私も…轟君のことが…」
一度その言葉を口にすると、今まで抱いていた気持ちが溢れて止まらなくなる。
感情のまま言葉が溢れて止まらない。
「ずっとずっと、轟君のこと見てて、あっという間に好きになって、でも伝える勇気なんてなくて…だから、あの…」
上手く気持ちが伝えられない。
それがもどかしくて、気がつくと涙が溢れていた。
「…雪水の気持ち、充分伝わった。ありがとう」
そう言って彼は、きつく私を抱きしめた。
その温もりに安心したせいなのか、更に涙が溢れて。
抱きしめる力を少し緩めた彼は、さっきと同じ優しい手で私の涙を拭った。
「なぁ、キスしていいか?」
「…うん」
私の声は聞こえたのかわからない位小さなものだったけど、彼はちゃんと拾ってくれて。
お互いにどちらともなく瞳を閉じて、ゆっくりと距離が縮まっていく。
再び私の唇に彼のそれが重なった。
さっきも同じ事をしている筈なのに、何もかもが違って思えた。
彼を好きな気持ちが溢れて、その気持ちが心を満たしていくのがわかる。
ずっとこのまま時間が止まってしまえばいいのに。
その思いからか、さっきよりも長くそうしていた気がして。
名残り惜しむように彼はゆっくりと唇を離した。
そして、そっと私の頬に手を添えて、噛みしめるようにして言葉を紡ぐ。
「雪水、好きだ」
「轟君、好きだよ」
お互いに自然と笑みが溢れていた。
一度私の頬を撫でてから彼はその手を離した。
「そろそろ帰るか?」
「…うん……何か忘れているような…」
そういえば、私はなんで教室で寝てしまっていたんだろう。
そこまで考えて幼馴染のことを思い出した。
「華純!!!」
「お?」
いきなり叫んだ私に驚いたのか少し目を丸くしている彼の顔があった。
「あっ、幼馴染の用事が終わるの待ってたんだけど…まだ終わってないのかな…」
すぐ終わるといっていたのに全然帰ってくる気配がなくて、連絡をしてみようと携帯を手に取ると通知が来ていた。
【教室戻ってきたら何だかいい感じだったから先に帰るね!どうなったのかは後日じっくり聞かせてもらうから覚悟しとくように!!】
危うく携帯を落としかけた。
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