第11章 原作編《仮免試験》
紫沫SIDE
いよいよ迎えたヒーロー仮免許取得試験当日!!
学校からバスに揺られてやってきたのはーー…
「降りろ、到着だ。試験会場。国立多古場競技場」
相澤先生を先頭に降りると目の前には大きな会場。
「緊張してきたァ」
「多古場でやるんだ」
「試験て何やるんだろう。ハー、仮免許取れっかなァ」
「峰田、取れるかじゃない。取って来い」
「おっもっモロチンだぜ!!」
「この試験に合格し仮免許を取得出来ればおまえら志望者(タマゴ)は晴れてヒヨッ子…セミプロへと孵化できる。頑張ってこい」
この日の為に訓練に費やしてきた十数日の成果を見せる時だ。
「っしゃあ。なってやろうぜ、ヒヨッ子によォ!!」
「いつもの一発決めて行こーぜ!」
「せーのっ"Plus…」
「Ultra!!」
「!」
予想外の声量に肩が跳ねて咄嗟に近くにあるものを掴んだ。
雄英の校訓を誰よりも大声で叫んだのは聞き覚えのない声で、
即座に皆の目線が集まると、帽子を被ったとても背の高い他校の男子生徒の姿。
「勝手に余所様の円陣へ加わるのは良くないよ。イナサ」
「おお、しまった!!どうも大変、失礼、致しましたア!!!」
男子生徒は更に声を張り上げ地面にめり込む勢いで頭を下げてきた。
多分礼儀正しい人なんだろうけど。
飯田君よりも高い身長にガタイのいい体格と気迫から威圧感を感じ、小動物特有の防衛本能に似た何かが私の足を一歩下がらせた。
「どうした?」
「ごめんっ、大きい人って少し苦手で…」
無意識の内に掴んだのは焦凍君の服だったみたいで。
そこから手を離すと、代わりに焦凍君の手が私の頭に添えられて。
「構わねぇ。なんなら手繋ぐか?」
「それは…大丈夫デス」
何だか子ども扱いされた気分だ。
そう思いつつも、頭を撫でられたことで安心感を覚えている自分もいて。
男子生徒に対する苦手意識は薄らいだけど、少しだけ焦凍君に身体を寄せた。
すると指に何かが絡まってきて、視線を向けるとそれは焦凍君の指で。
「こうすればクラスの奴らには見えねぇだろ」
皆からは見えない様にと焦凍君の後ろで隠して繋がれた手。
さっきのは周りを気にして断ったわけではなかったのだけれど。
もう繋がれてしまった手をわざわざ振り解くのは気が引けるからと、さっきの自分に何故か言い訳をして。
その指をそっと絡め返した。
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