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【ヒロアカ】雪恋【轟焦凍】

第10章 原作編《入寮〜圧縮訓練》


轟SIDE


会えなくとも変わらないとはどれだけ強い気持ちなのか。
それを向けられている存在がいると想像を巡らせた時、心が小さく波立つのを感じた。

「お姉ちゃんだけじゃなくて…焦凍君を一番に想う気持ちも、ずっと変わらないよ」

それはまるで俺の心を見透かしたように告げられた言葉。

「紫沫…」

俺以外にも心から慕う存在がいたのだと細波は徐々に荒波へと変貌を遂げ、それは嫉妬にも似た感情として姿を成す。
俺に対して向けられた言葉を素直に嬉しいと思う反面。
持て余す程の対極した感情から、籠の中に閉じ込めて紫沫の瞳に映る世界を俺だけにしてしまいたい…と。
酷く浅ましい思考回路に、己の独占欲の強さと歪んだ想いを自覚せざる得ない。

「ずっと…傍にいてね…」
「ああ。ずっと傍にいる」

そんな妄念を抱いているとは微塵も知らないであろう目の前の存在は、純真無垢に俺を求めて添えた手に自らも頬を寄せている。
純粋に愛したい想いと、歪んだ愛で全てを奪ってしまいたい想いとが混在して…
衝動を抑えられなくなりそうだ。

「紫沫、愛してる」

口にして仕舞えば、どちらも愛である事に変わりはない。

「…愛してる。焦凍」

同じく愛と俺の名を呼ぶ口元が閉じる前に。
あどけなくも熟れた唇に欲するまま己を重ねていた。
俺の味覚は紫沫を蜜よりも甘いと知覚する。
それは麻薬の様な中毒性をもって、摂取する程に欲を増幅させて止まることを知らない。
逃さぬ様に後頭部へと滑らせた手と腰に回した腕で更に引き寄せ。
息つく隙もない程に角度を変え、舌を絡めとり、漏れる吐息までも呑み込んで。
尽きることの無い欲は満ちることを知らず。
腕の中で徐々に倒れていく様が、胸の中で灯る熱の温度を加速度的に上げていく。
小さく身悶える身体が俺の下に納まる光景から、ソファの上で事に及び兼ねない状況にゆっくり身を引けば。
どちらのモノとも言えない粘液が月の光に照らされ、銀糸となって互いの口元を結んでいる。

「しょぅ、と…くん…」

見上げてくる虚ろに濡れた瞳の奥に潜む熱を今の俺が見逃すはずもなく。
自由を失くした身体を抱き上げ、自室へと足を向ける。
窓から覗く夜空に浮かぶ月が眩く程に綺麗で。
今夜は紫沫を骨の髄まで喰らい尽くしてしまいたいと求めずにはいられなかった。

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