第9章 原作編《神野事件》
紫沫SIDE
勢いよく飛び込んだのに焦凍君はちゃんと受け止めてくれて、強く抱き締めてくれた。
「なんで…いるの」
「中々連絡来ねぇから、待てなくて来ちまってた」
「ごめんね…」
「俺が勝手に来ただけだから気にすんな。つうか、1人なのか?」
「あ、睡さんは今回の騒動でまだ学校から出られないみたい」
「それ、いつ帰ってこれんだ?」
「わかんない…警察の人もそこまではわからないみたいで…」
そこまで言って、もしかしたら今日一晩を一人で過ごす事になるかもしれないと思い無意識に焦凍君の服を小さく握ってしまっていた。
「…取り敢えず中入るか?」
無言で頷いてオートロックの中へと足を進める。
数日ぶりに帰ってきた家の中は何だか少し埃臭い気がした。
あれから睡さんも帰ってきていないのかもしれない。
何か連絡が来ていないかとスマホを見ると留守電が入っていたのに気付く。
内容は私が無事で良かったという事と、やっぱり暫くは家には帰れそうにないという事。
そして出来ればその間は友達の家にお世話になるか出来る限り誰かと一緒にいるようにとの事だった。
「俺ん家、今は連れて行けねぇんだ。だから、ミッドナイトが戻るまで俺がここにいる」
「いいの…?」
「当たり前だ。紫沫を一人にさせるわけねぇだろ」
「ありがとう…」
今の私にとって焦凍君が傍にいてくれることは何よりも安心出来たし、少しでも長く一緒にいたい気持ちもあったから素直に甘える事にした。
睡さんに無事帰ってきた事と、焦凍君が傍にいてくれる事になったという旨のメッセージを送る。
そこまでしてある事が頭に浮かんだ。
「あの、今日の夜は…」
「泊まる」
「…寝る時どうしよう」
一つ余っていた部屋を私が使わせてもらってるからお客さん用の部屋がなかったのだ。
「一緒に寝ればいいんじゃねえか?」
「一緒に…?」
「紫沫小せぇし大丈夫だろ」
そういう問題ではない気がするけど。
睡さんの寝室は使えないし、流石にリビングのソファで寝てもらうのも気が引ける。
そうなるとやはり私の部屋しか残っていない。
同じベッドで寝るなんて緊張するけど、そう言えば前にそんなことがあったななんて思い出しては少しだけ嬉しく思っている自分がいた。
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