第6章 原作編《期末試験》
紫沫SIDE
放課後の練習が終わり、轟君は期末に向けての個人練をして待ってくれていたので今日も一緒に帰っているのだけれど、私は思い通りにいかない"個性"の制御で頭を悩ませていた。
「前は普通に使えてたのになぁ…」
「練習、上手くいってねぇのか?」
「うん…しかも、期末で忙しくなるから今日が最後だって言われて…って、筆記の勉強全然してなかった!」
「中間、成績悪くなかっただろ?」
「高校に入って専門的な内容が増えたから、その辺まだ自信がなくて…」
「なら、一緒に勉強するか?」
「する!」
授業を受けていれば問題ないと言っていた轟君にまさかそんなお誘いをしてもらえるとは思わず、二つ返事で提案に乗り、休日の午前はお母さんのお見舞いがあるからと午後から会う約束をする。
てっきり以前の様に轟君のお家でするのかと思えば、何故かこちらの家でと言う事になり、睡さんに確認するとすぐにokをもらった。
そして現在、私の部屋に轟君が来ました。
(何これ、なんでこんな緊張するんだろ…)
因みに、睡さんは期末の準備とかで休日出勤らしく今日はいない。
それも相まってなのか、余計に緊張してしまう。
「紫沫の部屋、初めてだ」
「そ、そうだね。前は轟君のお家にお邪魔して」
「コレ」
「え?」
轟君が何かを見つけたらしく、私の言葉を遮ってある物を手に取った。
「あ、それは…」
「まだ、持ってくれてたんだな」
それは、轟君がクリスマスプレゼントにくれた雪の結晶のチャームがついたネックレス。
離れてしまって、付けたままではいけないと思っても捨てる事は出来ずに、ずっと想い出として部屋に飾っていたのだ。
「どうしても、手放せなくて…」
「俺がまた付けてやってもいいか?」
「いいの…?」
「ああ。付けさせてくれ」
轟君に背を向けると、後ろから回されたネックレスが再び私の首へとかけられる。
「やっぱり似合うな」
その声は以前ネックレスを付けてくれた時と同じ様にとても近くて、緊張とは違う何かが私の鼓動を早くした。
「ありがとう」
だから、お礼を告げて離れようとした時、
「髪、伸びたな」
「え?」
「紫沫の髪に触んの好きだ」
轟君に髪を触れられた事で、その場から動けなくなってしまった。
.