第6章 原作編《期末試験》
紫沫SIDE
あれから数日後、辺りには蝉の鳴き声が聞こえ始め、夏がすぐそこまで来ている事を報せていた。
「えー…そろそろ夏休みも近いが、もちろん君らに30日間一ヶ月休める道理はない」
「まさか…」
「夏休み、林間合宿やるぞ」
「知ってたよーーやったー!!!」
「肝試そー!!」
「風呂!!」
「花火」
「風呂!!」
「カレーだな…!」
「行水!!」
「自然環境ですと、また活動条件が変わってきますわね」
「湯浴み!」
「いかなる環境でも正しい選択を…か。面白い」
「寝食皆と!!ワクワクしてきたぁあ!!」
楽しみにしている様子がありありとわかる反応に私も何だか楽しみなっていると、例の如く相澤先生が"個性"を発動した事によって、クラスは水を打ったように静かになる。
「ただし、その前の期末テストで合格点に満たなかった奴は…学校で補習地獄だ」
「みんな頑張ろーぜ!!」
「くそ下らねー」
そう言って相澤先生が釘を刺してくれた日から時は流れ、六月最終週ーー…期末試験まで残すところ一週間を切っていた。
「全く勉強してねー!!体育祭やら職場体験やらでまったく勉強してねー!!」
「確かに」
折角の忠告も水の泡となってしまっている生徒が数人いた。
「中間はまー入学したてで範囲狭いし、とくに苦労なかったんだけどなー…行事が重なったのもあるけど、やっぱ期末は中間と違って…」
「演習試験もあるのが辛えとこだよな」
「あんたは同族だと思ってた!」
「おまえみたいな奴はバカではじめて愛嬌出るんだろが…!どこに需要があんだよ…!」
「"世界"かな」
中間テストの結果から、あまり成績が良くなかった様子の上鳴君(21位)や芦戸さん(20位)を横目に、意外や意外峰田君(10位)が余裕な表情を浮かべていた。
「アシドさん、上鳴くん!が…頑張ろうよ!やっぱ全員で林間合宿行きたいもん!ね!」
「うむ!」
「普通に授業うけてりゃ赤点は出ねぇだろ」
「轟君、中学の時と変わらないね」
「特にそれで困った事はねぇしな」
「言葉には気をつけろ!!」
励ましの声をかける緑谷君(4位)と飯田君(2位)に反して辛辣な轟君(5位)に少し苦笑が漏れる。
因みに私の中間テストの結果は6位で、やっぱり轟君には敵わなかったけど、それでも充分満足出来る成績ではあった。
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