第10章 fallita【ブチャラティ】
やってしまった。
無事意識を取り戻した直後だというのに、絶望がずしり、とのしかかる。胃袋の中に目一杯重石を詰めこまれたみたいだ。
───任務でミスをした。それも重大な。
昨晩、上からの指令である男を追っていた。
ここ最近街で頻発していた不可解な事件。おそらくスタンド使いの仕業だと考えられた。
恐ろしいまでの組織の情報網の働きで、すぐに容疑者として浮上してきた"その男"……縄張りを荒らされたボスが放っておく訳がなかった。
"男"が本当にスタンド使いであるのかどうか調査しろ。容疑が全て真実なら──そいつを捕らえろ。
チームに下された任務に、私はミスタと組んで当たっていた。
そして薄暗い路地裏で、私達は男を追い詰めたのだ。
予想通りそいつはスタンド使いであり、今までの事件の犯人でもあった。
割と攻撃的なスタンドを持っていたけれど、私とミスタに2人がかりで攻められては太刀打ちできない様子で、情けなく命乞いをする。
「た、頼む、頼むよォ〜ッ!今までのは出来心なんだ!こんな力を持ったら、誰だって試してみたくなるだろッ!?なあ、い、いい命だけは助けてくれェ…!」
「それは組織が決める事よ。せいぜい頑張って頭を下げるのね」
もう足腰が立たないらしく、這いずって逃げようとする所に一撃くれてやると、男は呆気なく伸びて床に転がった。
これでコイツは捕らえた。
あとは上に引き渡せば任務完了だ。
ふう、と息をついて、私は後ろのミスタを振り返った。
「それじゃあミスタ、あ───」
「チヒロ!そいつまだ───!!!」
ミスタが全て言い終わらないうちに、私の腹部を焼け付くような熱さが襲う。
ドン、という鈍い音。視界の端に、ヤツが向けた銃口が映る。
「チヒロッ!!──テメェッ!!!!」
弾丸と共にピストルズが発射される音が遠く聞こえる。私の意識は、そこで途絶えた。