第1章 Pensami!【ジョルノ】
共に任務を終えたばかりの身としては、彼女ばかりに仕事をさせるのは忍びない。
せっかく2人共無事でアジトに戻ってきたのだから、最後の仕上げは少しばかり休息を取ってからでも遅くはないだろう。
だがそんな彼の思惑とは裏腹に、チヒロは手を休めようとしない。
「私なら大丈夫よ。任務が滞りなく終わった事、ブチャラティに早く報告しないと」
「ブチャラティが帰ってくるまで、まだかかりますよ」
「そうだけど…少しでも早く仕上げたくて。ああそうだわ、この前の商店同士のいざこざ、あれも上に報告しなくっちゃあ…」
一休みするどころか、更に仕事を増やすつもりらしい。これにはジョルノも小さくため息をついた。
「適度な休息も、スムーズに仕事をこなすためには必要だと思いますが」
彼の言葉に、チヒロは困ったように笑う。
「ふふ、そうよね…。でも私、少しでも多くブチャラティの役に立ちたくて。ブチャラティの力になれるなら何だってやりたいのよ。それでつい…張り切ってしまうのかもね」
頑なに働き続ける後ろ姿を、やや眉根を寄せて見つめる。
ブチャラティ、ブチャラティ、ブチャラティ。
彼女のきらきらした瞳に映るのはいつだってこのチームのリーダーだ。
もちろんジョルノだってブチャラティの事は好きだ。上司として、何より志を同じくする仲間として、心から信頼している。
だが、こうも名前を連呼されると───…
さすがに面白くない。
チヒロが自分を救ってくれたブチャラティに恩義を感じ、絶大な信頼を寄せているのも、家族のように慕っている事も分かる、けれど。
ほんの少しくらい、手を休めて隣に座ったっていいのに。
その嬉しそうな笑顔を、少しは僕に向けてくれたっていいじゃあないか。
今までの経緯からも、彼女が自分を単なるチームの後輩で、年下の少年だという風にしか思っていないという事は容易に想像できた。
……ならば。