第29章 約束
今日もさえりに触れた。
さえりを城へ送った帰り道、光秀はいつものように一人、丘へと来ていた。いつの間にか、さえりに触れた後は必ず此処に来るようになっていた。
自分の部屋はさえりの香りが溢れている気がして、すぐに帰る気にはなれなかった。
制御、出来なくなりそうで。
樹を背にしてドカリと座る。今日もさえりの反応は可愛くて、いやらしくて、どうしたって光秀の身体は反応する。
さえりは、気付いているのだろうか?
ごそごそと、自分の大きくなったイチモツを取り出す。はち切れんばかりのソレは悲鳴をあげ、光秀に訴えているようだ。
さえりの中に入りたい、と。
きっと温かく包み込んでくれるのだろう。
光のように。
だが。
「約束を違える訳にはいかないのでな」
光秀は自分のモノをぴんっと指で弾いた後、出来るだけ無心でそれをしごく。
何度も何度も、欲を吐き出す。
「はあっ……」
少し苦しそうな吐息を吐いた後、やっと落ち着いたイチモツから手を離した。
空には満天の星々と、月が浮かぶ。あと数日で下弦を迎える月は、まるで笑顔を描いたかのような半月だ。
――天よ、俺を笑うか。
――月よ、嘲るか。
「自業自得だな」
さえりに触れて以来、こうでもしないと制御不能になりそうな自分が情けない。それでも触れずにはいられなくて。
紅い印を毎回付けるのは、今だけは俺のもであって欲しいという独占欲の表れだ。
「今だけだ。今、だけ……」
いずれは帰らねば。闇の世界へ。
俺は闇を歩く者。
自らの望みの為に、自ら選んで闇を進む。
我が名は明智光秀。
我が望み叶えるまで誰にも邪魔はさせない。
それは自分の気持ちでさえも。
そう、このまま……
着物を整え立ち上がる。
心を殺し、光秀はさえりの香りが消えたであろう自分の部屋へと静かに戻っていった。