第24章 誘惑
さえりが横でぐったりとしている。意識を飛ばしたのかそうでないのか、朦朧としているのか眠ってしまったのか、はっきりしない。
構わずさえりの手をとり指を絡めた。手の甲に口づける。
この3日間、さえりがしてくれた事が嬉しくて、つい激しく抱いてしまった。見事に誘惑されたものだ。そのせいか、幾つか本音も漏らした。
さえりを抱くと、壊してしまいそうで怖かった。それでも抱かずにはいられない。
もう一度手の甲に口づける。
「愛している」
光秀は呟いた。さえりが微笑んだ気がした。
さえり、知っているか?
お前の表情が言葉が仕種が
俺を惑わせている事を
お前の存在自体が
俺を誘惑しているという事を
知っているか?
こんなにも、幸せな気持ちになれる男がいるという事を……