第4章 ✼勿忘草✼
「お前が右、俺が左に付ければ良い」
(それって謙信様とお揃いって事?)
「嬉しいです…ありがとうございます、謙信様」
元々付けていたピアスを外してお揃いのピアスを右耳に付けると、謙信様は満足そうに笑った。
「お前の耳に傷がついてしまうのが気になるが…やはりよく似合う。綺麗だな」
「ありがとうございます…」
「俺のはどうやって付ける」
「あ…はい。少し痛いかもしれないですけど我慢してくださいね」
…
……
………
(手が震える……)
謙信様のピアスを開けるとは言ったものの、どうしても怖くて思い切る事が出来ない。
「何をしている、結」
「すみません…えっと…謙信様の耳を開けるのが申し訳なくて…」
「お前に付けられた傷なら何とも思わん。一思いにやれ」
(開けられる方が強気だ……)
もうやるしかない、と思い、私はピアッサーを押す手に力を込めた。
————————カシャンッ……
*。°○.:+**。°○.:+**。°○.:+**。°○.:+**。°○.:+*
「わあ…!謙信様、とっても似合ってます!」
予想通り選んだピアスは謙信様にとても似合っていた。
「怖気づいたり喜んだり、愛らしいな、お前は」
綺麗なピアスは謙信様の美しさをより一層際立させていて、女の私から見ても綺麗だった。
そして、このピアスを選んだ理由がもう一つ。
「謙信様の刀が姫鶴一文字というと聞いたので、鶴を見てちょっと気になったんです」
「それで鶴か」
「はい。だから謙信様……戦の時はこれをお守りにしてください。無事に帰ってこられるように」
「結…分かった。戦の時はこれでお前を思い出そう」
謙信様に頭を引き寄せられ、額を合わせると、二つのピアスがシャラッ…と音を立てて合わさった。