第1章 ✼千日紅✼
窓から麗らかな日差しが降り注ぐある日……
その教室内は授業中にも関わらず、いつも通り喧騒に包まれていた。
「皆は戦国武将って知ってる?」
「俺知ってるよ!おだのぶなが!!」
「私も!とくがわいえやす!」
名前が出てくるのは誰もが知っている有名武将。
織田信長、徳川家康、伊達政宗、豊臣秀吉……
きっと何をした人かなんてさほど気にとめていないのだろう。
そんな中、ある女の子が教卓へと目を向けて声を上げた。
「先生の好きな武将はだぁれ?」
先生と呼ばれた若い女性は少し考えるような素振りを見せた後、優しく微笑む。
「先生は…上杉謙信かな」
「うえすぎけんしん?」
「小学校では習わないから皆は分からないかな……でもね、凄く素敵な武将だったんだよ」
有名な武将ではあるけれど目の前にいる生徒はまだ小学一年生。
上杉謙信の名前を知らなくてもおかしくないだろう。
好奇心旺盛な子供達は、知らない名前が出てきて、それを知ろうと目をキラキラさせた。
「どんな人?凄く強かったの?」
「もちろん強かったよ!でもその人はね、すごーく奥さんを大切にしたの」
「へ~!どんな人だったの?!教えて教えて!」
「じゃあちょっとだけ」
こうして女性は上杉謙信の生き様について語り始めた。