第13章 ✼碇草✼
大丈夫と答えつつも、結はいつもより汗をかいていて呼吸も浅い。
(今日はあまり無理はさせられないな……)
まだ体力も完全には回復していないだろうし、なんせ久しぶりの情事だ。
「結、今日はもう休め」
結の中から自身を引き抜くと、結が慌てて抱き着いてくる。その時に一瞬顔を歪めたのを俺は見逃さなかった。
「やっ……」
「我儘なお前も好きだが、体は大事にしなさい。今動いたのも辛かったのだろう?」
「そんな事っ…けほっ…っ…」
小さく咳をする結を見て、口移しで水を注ぎこむ。
結は少し落ち着いてから、泣きそうな声で小さく呟いた。
「謙信様と、離れたくないです……」
「それは俺も同じだよ。だが呼吸が浅い。こんなに汗もかいて……無理はするなと言っているだけだ」
「はい……ごめんなさい…」
最近の結は俺に対して少し我儘だ。
俺に、というか俺と一緒に居る事に我儘になってきている。こればっかりは時間が解決していくしかないが、目の前で小動物のようにしょぼくれる女は実に可愛かった。
「お前が眠ってから起きるまでずっと傍に居る。だから休め。体が戻ったら好きなだけ愛してやる」
……これは俺だけの秘密なのだが。
結は頭を撫でられるのが好きなだけでなく、安心するらしい。
俺も横になり、結を抱き締めると満足そうな笑い声が聞こえた。
「ふふっ…暖かい。おやすみなさい、謙信様」
「ああ。ゆっくりお休み」