第13章 ✼碇草✼
§ 謙信Side §
そよ風の中、聞こえた小さな寝息。
俺の天使が腕の中ですやすやと眠っていた。
(最近は疲れていたようだからな……)
結は人一倍優しく、お人好しで頑張り屋だ。
だからこそ、自分が疲れている事にも気付かない時がある。
「……本当に、こういう時ほど邪魔が入る」
感傷に浸っていた時に耳に入った足音。一つじゃない、複数いる。
折角ここは人の声が入らない、風の音だけを楽しめるところだというのに。
「おい!良い身なりしてんじゃねえか!女も連れてよぉ……その女と金を置いて…っ…がはっ…?!」
「煩いぞ。結が眠っているのが見えんのか。起こしたらどうする」
言い終わらないうちに斬りつけると、男は反撃もせず、ばたりと倒れた。
その後に斬りかかってきた5.6人も全く骨のない奴で、まるで俺が一方的にいじめているようになってしまう。
「そこで黙って寝ていろ。この子が起きてしまう」
少し邪魔が入ったがそろそろだ。
長い年月をかけて結の為に皆が作り上げたものが形になるまで、もう少し。
結と歩む新しい未来まで……。
「お前はどんな顔をしてくれるのだろうか。とても……楽しみだ」