第11章 ✼薺✼
「え……?!もしかしてさっきの人と?」
会った時に少しだけ見た、優しい笑みを浮かべる女性を思い出す。
「うん。こっちの神社で結と会った後に大学で出会ってね。来年には籍を入れるよ」
「おめでとう……!」
本当に嬉しかった。
私の為に自分が苦しむ選択をした叶多を見て、実はずっと私の存在が叶多を縛り付けてしまっているのではないかと思っていたから。
「ありがとう。時間も無いだろうし俺も待たせちゃってるからそろそろ行くよ。結、謙信様、お幸せに」
「ありがとう……!」
「何故お前が泣きそうになっている」
「だって…っ……嬉しくて…」
「俺達も今から幸せになるのだろう?」
「はい……」
そう言って小さく笑う謙信様も、どこか嬉しそうだった。
「もう時間も無い。少し歩こう」
どこに行くでもなく、イルミネーションの中を手を繋いで歩いた。それこそ、この時代で生きている普通の恋人みたいに。
ふと、謙信様が足を止める。
「あれは……」
謙信様の先にあったのは、何かの建物。少しだけ離れたところにあるそれは、ライトアップされていないもの、周りの明かりのお陰で見えていた。
「行ってみましょう」
辿り着いた先は小さな教会。
人気も少なく、必要最低限の明かりだけが灯っていた。
「こんばんは。こんな夜に見つけていただけるなんて光栄だ」
「え……?」
どこからともなく声を掛けてきたのは、カソックを身に着けた男性だった。
「私はここで神父をしている者です。聖なる夜に出会えたのも何かの縁。教会を見ていかれますか?」
「いいのか?」
「ええ、勿論」
キリスト教は確か日本では信長様が認めて広まっていったはず。謙信様には教会もあまりなじみのないものかもしれない。
それに、この時代で暮らしていても教会に入る事なんてあまりない。
「謙信様、見ていきませんか?」
「そうだな」
神父さんに導かれて、私たちは教会の中へと足を踏み入れた。