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〘上杉謙信R18〙色褪せぬ愛を紡ごう

第9章 ✼赤熊百合✼



§ 結Side §


「結様、夕餉は……」


「ごめんなさい。食べられそうにありません」


安土に帰ってきてから、私は無理に笑うのをやめた。
それは、私が目を覚ました時に家康にこう言われたから。


「もう無理に笑うのはやめて。そのままの結でいいよ」


笑顔を作ることも、頑張ることもやめてしまった私は部屋にこもるようになった。

何を口にする気にもなれない。

誰と喋る気にもならない。

顔を合わせて会話するのは、信長様と家康だけ。
これでは本当に"織田家ゆかりの姫"というただのお飾りだ。


なのに、そんな私の事を皆は叱咤するでもなく、ただ静かに見守ってくれていた。
それにまた心が痛くなる。


(久しぶりに裁縫でもしようかな……)


近くにあった針子道具に手を伸ばしたところで、柔らかな声が私を呼ぶ。


「結、俺だけど」


「家康?どうぞ入って」


部屋に入ってきた家康は夕餉を手にしていた。


「結。もう三日も夕餉食べてないよね」


「……食べたくない」


家康の前では、何故か強がる事を忘れて子供のようになってしまう。
そんな私を見て家康は深い溜息を一つついた。


「ねぇ……このままだと倒れるよ。少しでいいから食べて。これだっていつもの半分も入れてない」


家康は、黙って私の口に匙を運んでくる。
食べる気がしないとは本当だけど、私だって家康に迷惑をかけたい訳では無い。
目の前を匙を口に含むと、懐かしい味が口の中に広がった。


「おいしい……」


「これ、政宗さんが作ったものだから」


久しぶりの夕餉を食べ終えると、次は傷の治り具合を見てもらった。


「うん。少しずつだけど傷も塞がってる。背中の傷は跡は残らないと思う」


「ここは……残っちゃうかな?」

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