第8章 ☆イケメン戦国四周年記念SS☆
「貴様、天下人の女になる気は無いか?」
そう言われて、この世界に飛び込んでから四年という月日が経った。
楽しい日々ばかりではなくて……多分、この気持ちに気付くことなく現代に帰っても、そこに後悔はなかったんだろう。
いつもの通り仕事をこなして、友達とご飯を食べに行って……それはそれで充実した日々になっていたと思う。
だけど私はこの気持ちに気づいてしまった。
最初に出会った戦国武将とは違うけれど……
「結」
「謙信様……」
当たり前のように腰に回される腕に、上から手を重ねる。
「どうした?」
「いえ……ここに来た時の事を思い出していて」
「そういえばお前と会ってもう四年が経つな」
そういえば……なんて言いながら、謙信様は誰よりもこの日のことを覚えていたと思う。
目の前に広がるのは一面真っ白な花が咲く花畑。
なんの前触れもなく「出掛けるぞ」と言ってここに連れて来てくれた。
腰を下ろすと、謙信様が私を後ろから抱き締めてくる。
「お前に出会って、俺は変わった。それはいつも言っているだろう?」
「……?はい」
「お前は、変われたか?」
「私が……?」
「お前はお前のままでいい。だがな、今でも帰りたいと思うことはないか?」
「無いですよ。謙信様のお傍にいられればそれでいいです」
私の肩に置かれた謙信様を頭を撫でると、謙信様は甘えるように私にすり寄ってきた。
「ふとした時にもし俺が、お前をいい方向に変えられたらいいと高望みをしてしまう」
「変わった、と言うよりかは……」
謙信様に出会って初めて知った「人を愛する」という感情。
好きよりも大きい、この人が居ないと生きていけない……それくらい大きな気持ち。
「こんなに好きになったのは謙信様が初めてです。初めてじゃ嫌ですか……?」