第2章 ✼藤✼
「結、知り合いなのか?」
私に問掛ける秀吉さんの声で我に返ると、そこには確かに私の"知り合い"の姿があった。
「あ…うん。ここではちょっと話しにくいから…。あの、この人は悪い人じゃないです。後で信長様にも合わせるので一度私の部屋に連れて行っても良いですか?」
「俺も行こう」
家臣の方は心配そうな顔をしながらも、秀吉様が付いているならとその話を承諾してくれた。
「結…ここ何処?」
「とりあえず来て。話はそこで説明する」
三人で私の部屋に入り、円形に正座する。
「えっと…じゃあまず秀吉さんから。この人は私の現代での友達で、叶多です」
叶多とは高校の同級生で、卒業してからも連絡を取り合っていた仲だ。
「結の友達だったのか。いきなり捕らえてすまない。俺は豊臣秀吉だ」
秀吉さんが片手を差し出すと、叶多は困惑した様子で握手に応じる。
「豊臣秀吉……」
「叶多、いきなりで申し訳ないんだけどここは戦国時代なの。今いる所は安土城の中の私の部屋」
「は……?」
(やっぱりそうなるよね……私もそうだったし)
鳩が豆鉄砲を食らったような顔をする叶多に、恐らくワームホーでタイムスリップをしてしまった事、いつ帰れるかは佐助くんに聞いてみないと分からないことなどを一通り説明すると、叶多は眉をひそめた。
「じゃあここは本当に戦国時代で、目の前にいるのは本物の豊臣秀吉?」
「そうだよ」
「マジか…」
事の成り行きは理解出来てもこの状況を受け入れるには少し時間がかかる。
聞けば、叶多も本能寺跡地からタイムスリップしたかもしれないとの事だった。
「急に大雨が降ってきて傘も持ってなかったからさ。急いで帰ってるときに本能寺跡って書かれた石碑の前は通ったよ」
(これはやっぱりタイムスリップか……だとすると直ぐには帰れなさそうだな)
「とりあえず信長様に挨拶して、このお城に置いてもらえるか聞いてみよう?」
秀吉さんと別れ、二人で天守へと向かうと、既に事情を聞いていた信長様がクツクツと喉を鳴らして楽しそうに待ち構えていた。