第1章 01.はじめましてのキモチ
「…いつかあのフード絶対に剥いでやるからな…っ!!!」
監査官の居なくなった部屋では苦々しく顔を歪ませた。
さっきから刀を眺めてみたものの、見れば見る程なにも変化はない。
「詰んだ。これ間違いなく詰んだよ私」
試しに目の前の刀をブンブン振ってみたけど、カッコいい気分になれるだけでなんの成果も得られなかった。
「あー、日が暮れてきたなぁ…」
審神者の間は2階にあるから夕陽が綺麗に見えるなぁ〜。あはは〜…。
途方に暮れて、窓際から遠くに見える大木を見つめいると、
(あ、あれ…?)
誰かいる…?
遠すぎて顔までは分からないけど。
なんだか目が離せない。
《…ぁ…じ…》
「へ?アジ?マグロ?」
背後から聞こえた声の方向へ振り返ると同時に、勢いよく外から風が入ってきた。
(……あ)
目の端に先程いた人影は居なくなっていた。
(今のは…?)
気に留めながらも、は部屋の中に目を向けた。
紅の鞘に入った刀から淡い光が滲んでいる。
(綺麗…)
導かれるように静かに、ゆっくり歩み寄る。
《…あるじ、おれをえらんで…》
鈴の音のように声が頭の中で響き渡った。
(…眠っている物の想い、心を目覚めさせるのが審神者の力…)
近づくほど刀から想いが伝わる。
《強く…誰よりも強くなりたい…》
神経を集中させて。
《もう、折れないから…っ!》
切れかけた糸を一本一本繋ぐように。
《…だから、今度こそ…っ!》
《……ずっと、そばに居させて……》
パァアアア…!
触れた指先から刀が光に包まれ、眩い光が部屋を包み込んだ。
流れ込んだ想いの意味までは分からない。
でも、激しい後悔と相手を想う優しい気持ちが痛いくらい伝わってきた。
ずっとそばに…。