第2章 胸はずむ
「この程度だったら自然治癒でもいいさね。」
切島君に夢のお姫様抱っこをされたのに痛みで全くドキドキできず、痛い痛いと叫びながら保健室まで連れてこられた。すごくうるさかっただろうし、何とも言えない複雑な気持ちになった。切島君本当にごめん。
リカバリーガールに擦りむいた膝に消毒と絆創膏だけ貼って貰って怪我の処置は終わった。
「ありがとうございます...。あの、私の個性の痛みってリカバリーガールで治りますか?」
「無理だよ。私は傷は治せるけど痛みを治すわけでは無いからね。感覚の問題で身体的に問題がないなら私では無理さね。」
「原操なんか、持病でもあるのか?こんなこと聞いたらダメかもしんねェけど、」
心配そうな顔で私を見つめる切島君は、宛ら捨てられた仔犬のような顔をして問うてくる。ぎゃ、ギャップ〜。
「違う違う!そんな、大それた事じゃないよ。私の個性の影響なの。使いすぎると骨が軋むような音がしたり痛みがあったりするんだけど、痛みだけで本当に折れたりは全くしてないの。」
「そ、っか。良かった。俺マジで倒れたのかと思ってすげぇ焦った。」
事情を説明して納得すると、切島君は胸を撫で下ろしすぐにいつもの太陽のような笑顔に戻った。こういうのをワンコ系男子っていうのかな、イケメン辛い。
「さ、暗くなる前にさっさと帰んなさい。ちゃんと送って行ってやるんだよ。」
「はい!」
「失礼いたしましたー。」
リカバリーガールに挨拶を交わして、私たちは保健室を出た。切島君に送るように言ったリカバリーガールだけど、流石にそこまでは申し訳なさすぎる。
「切島君、今日は有難うね。切島君が来てくれなかったらそのまま気絶してたかもしれない。」
「いや、俺はそんなお礼言われるような事してねぇよ。困ってたら助ける、ヒーローの基本だろ?」
「ふふっ、そうね。有難う。それじゃ、私教室にカバン置いたままだし取ったら帰るね。」
「あっ、原操送るって。リカバリーガールにもいわれただろ?」
「いや、本当にそこまでしてもらったら申し訳ないから!私なら大丈夫だって、ほらちゃんと歩けるしさ。」
そう言って、一歩前に踏み出せば誰かに足をかけられたみたいに急に力が抜けて、私の視界が傾いた。