第1章 タイムスリップ⁈
よく晴れた日の、下校中。
私はいつものように格好つけて、
数学の参考書を読みながら歩いていた。
後ろで、何人かの男子が話しながら歩いている。
そのうちの一人の声を聞いた瞬間、
心臓が跳ねた。
松平 涼(まつだいら りょう)。
彼の名はきっと、大人になっても忘れられない。
私の、初恋のひと。
去年の夏休みに、私は彼に恋をした。
彼は、転入生だった。
二年生のはじめだったと思う。
彼が来て、私は一位を取ることが少なくなった。
彼が一位を取ったときも、
彼は決してそれを誰かに伝えたりしなかった。
何故かは、分からないけれど。
彼が一位を取ったなんて知っている人は、私くらいだ。
席が隣で、風に飛んだ彼の成績表を見た私だけ。
だれも、彼が私より頭がいいなんて、知らない。
友達が、彼に
「真谷っていつも一位なんだぜ」
って言っても、
「ふーん、そう」
ってつまらなさそうにそっぽを向いて。