第9章 日だまりが止めた時間 巴日和
何年かたって、その屋敷は随分と殺風景になった。もう中庭に花も咲かない。
それでも依然として日だまりはあった。
日和はたまにここを訪れて、そこにダークレッドのリボンが巻き付けられた花束を置いた。
花束は管理人が掃除しているのか、来る度になくなっていた。
日和はなぜ自分がこんなにも彼女を追いかけるのかわからなかった。
なぜ。
「……綺麗だったんだ、君が」
日和は日だまりの中、空を仰ぐ。
「本当に………綺麗だった」
初めて会った日が昨日のように思い出せる。
日和は過去に思いを馳せながら、ずっとそこに立っている。