第8章 一途なワガママ 青葉つむぎ
『夏目くん、お願いがあるんです』
夏目ちゃんは全部話してくれた。なぜつむぎが私から離れていったのか、なぜ自分がつむぎの代わりのようなことをしていたのか。
私がつむぎに夏目ちゃんがいると言われ夢ノ咲に来る前日、つむぎがそう言いに来たらしい。
『俺は……もう、何もできません。もうfineでもないですから』
詳しいことは知らなかった。
夏目ちゃんは、大きな勝負事に決着がついたばかりでつむぎがその後処理をしていることを教えてくれた。
『英智くんに……の存在が知られてしまったんです。もしあの子まで駒として使われたらと思うと、正直どうしようもなく怖いんです。』
英智くんと言うのは、図書室で会った人だ。……あんなに仲よさそうに話していたのにどうして…。
『俺がに出来ることは全部やったつもりです。………………もう俺に出来ることは何もありません。それにこの先、俺はどうなるかわからない…。だから』
夏目ちゃんは私から体を離して、泥をはたきおとした。
「『だから、頼みます』……………ってサ。いくらあの会長でもそんなことしないと思うんだけド。君のことになると本当に盲目になるよネ。」
私は寝転んでいた地面から上半身を起こした。
最初は学院の騒動に私が巻き込まれると思って断っていたが、逆に監視下に置いた方がいいとつむぎがさとしたらしい。
「……………………………夏目ちゃん。」
「……」
「何で、つむぎはそこまでしてくれたの?私が何をされても、何も感じないこと、知らなかったの?嘘、だよね…?そんなの嘘だよね??」
頭がオーバーヒートしそうだった。わからないことばかりが蓄積されて、おかしくなりそうだった。
「……………………何かしてあげたイ」
夏目ちゃんは、私に手を差し出した。
「そう思うのっていけないこト?」
私はその問いに答えられなかった。
夏目ちゃんの顔がぼやけて見えなくなった。
……何で?
簡単。
涙が出たから。
「夏目ちゃん………」
久しぶりに聞いた自分の涙声。
あてもない虚空を掴むようにただ手だけを伸ばした
「………私、とっていい?…その手、…とっていい?」
さ迷う手を、彼は握ってくれた。
「良いヨ」
爽やかな笑顔だった。
「良いんだヨ、」