第3章 ねぇ、オオカミくん 大神晃牙
「ねぇ、オオカミくん」
『あ?』
「電話、初めてだね」
『そうだな』
「元気?」
『元気だよ』
「ねぇ、オオカミくん。私ね、結婚するかもしれないよ。」
『そうかよ。』
「あの本の彼氏と。びっくりした?」
『別に。』
「最近よくテレビでオオカミくんを見るよ。」
『はッ、ありがとな。』
「ねぇ、オオカミくん。何だかね、寂しい時があるんだよ。たまに隣を見るの。君が、いないかなって。」
『そりゃ大変だな。俺様はいねえのによ。』
「寂しくて、泣きそうになるの。オオカミくんとしたような会話は彼とできないんだよ。でも、私は彼が好きだな。」
『じゃあ良いだろ。』
「そうかな。」
『そうだよ。』
「ねぇ、オオカミくん。君は好きな女の子できた?」
『わかりきったこと聞くなよ。』
「そっか。そうなんだね。」
『そうなんだよ。』
「困ったね」
『困ってんだよ。』
「私、結婚して良い?」
『の人生だろ。幸せに生きろよ。』
「ありがとう。」
「ねぇ、オオカミくん。君は幸せ?」
『まぁ、楽しくやってんよ』
「よかった」
「ねぇ、オオカミくん」
「私ね、君とまた、色んな話がしたいんだ」
『お前の話は長いんだよ、』
「でもオオカミくんは聞いてくれてたよ。」
『聞いてやってたんだよ。』
「ねぇ、オオカミくん」
「寂しいね」
『寂しいな』
「ねぇ、オオカミくん」
「実は、もう結婚するの決まってるんだよ」
「明日結婚式なの」
『おめでとう』
「招待状、君のもあるよ」
『いらねぇ』
「言うと思った」
「ねぇ、オオカミくん」
「私と、出会ってくれてありがとう」
『俺様も、感謝してるぜ』
「ねぇ、オオカミくん」
『あ?』
「すっごく、何だか、寂しいね」
『あぁ、寂しいな』
「ねぇ、オオカミくん」
「オオカミくん」
「バイバイ」
『あぁ、またいつかな』
電話がきれたあと、私は電池が切れたようにパタリとベッドに寝転んだ。
隣にいた彼は、遥か遠くのステージに行ってしまった。
もう会えない、オオカミくん。
頑張りたまえよ、オオカミくん。