第12章 真実
翌朝、さえりは護衛と共に安土へ帰っていった。
「良かったんですか?あれで」
家康が光秀に問いかける。
「何がだ?」
恐らく昨日のさえりとのやり取りの事を言っているのだろう。
「別に、いいですけど」
家康はそれ以上、何も言わなかった。
確認作業をしていた光秀は顔をしかめた。やはり足りない。何か引っ掛かっていたのはこれだったか。
「家康。黒陽の部下が一人足りない。恐らく逃げられた」
「本当ですか」
一体いつ逃げられた?
ギリ、と唇を噛む。
すぐに手分けしての捜索が開始された。小物とはいえ逃げられると厄介だ。それに、何だか嫌な予感がする。
その後、光秀の予感は当たってしまった。
「光秀様、家康様、ご報告申し上げます! さえり様が何者かに連れ去られたとの事です……!」