第9章 姉と弟
日が沈み辺りが暗くなり人通りが無くなった城下町を
二頭の馬が通り過ぎていく
馬の背には疲れて寝てしまった葉月を
大事そうに抱き締めた謙信、その後ろに佐助が続く
城下を抜け長いのぼり坂を進みやっと春日山城へと到着した
「なんだもう帰って来たのか謙信」
「・・・・・貴様ここで何をしている」
馬を佐助にあずけた謙信はその足で葉月の部屋に向かった
そしてそこに居た人物、信玄を睨みつけた
「佐助を待っていた」
「ここは葉月の部屋だ
佐助の部屋ではない」
「どうせ待つなら男の部屋より女の部屋だろう?」
なぁ。と謙信に追いついてきた佐助にひらひらと手を振った
「貴様・・・・・また訳のわからぬことを」
ん~っと謙信の腕の中で葉月がもぞもぞと身じろいだ
「大きな声を出すと葉月が起きるぞ謙信」
チッと小さな舌打ちをして葉月を抱えたまま踵を返した
「葉月が来てから謙信は面白いな」
「信玄様何か御用ですか?」
楽しそうに笑う信玄にいつもの無表情で佐助は問いかけた
「ここを立つ前に佐助が言ってたことが気になってな」
踵を返した謙信は自分の部屋に敷かれていた褥に葉月を下ろし
自分の寝支度をすませ葉月の横に潜り込み抱き寄せ眠りについた
翌日の朝、葉月の悲鳴が春日山城に響き渡った