第8章 軍神と魔王
『あの・・・まさかこのまま帰るんですか?』
「そのつもりだ、なにか問題でもあるのか」
『わたし草鞋を履いてない』
「城に帰ればある」
「謙信様、馬を連れて来ました」
葉月を抱き上げたまま城門まで来た謙信
そこにはいつの間にか二頭の馬を連れて来た佐助
謙信はいつもの様に葉月を前に乗せ腰を引き寄せ手綱を握った
『ここまで乗ってきた馬が・・・』
「いらん、信長にくれてやる」
『佐助の馬に・・・』
「駄目だ」
『ある・・・・・』
「くどい、それ以上しゃべるならその口を塞ぐ」
『ごめんなさい!しゃべりません!!』
くいっと顎を持ち上げられ慌てて謝り
口を片手で抑え前を向いて背を謙信に預けた
「帰るぞ佐助」
「はい。謙信様」
二頭の馬は城下を抜けあっという間に安土を去って行った
「お帰りになったようです」
「最後まで騒々しい奴だ」
「そうですね」
「行かせてよかったのですか信長様」
「ああ、あの軍神の面白い顔が見れた
何より葉月が選んだことだ」
「あの佐助とやらは葉月の身内だったとはな」
「あれ?皆さん知らなかったんですか?
佐助君は葉月ちゃんの弟です」
私は二人の幼馴染ですと椿はにこにこ微笑んだ
「人質だった者がその城の城主に娶られるか」
「くくく、身代わりとはいえ葉月も織田家の姫だ
盛大に祝いの品を送ってやろうではないか」
後日春日山城の葉月のもとには
安土城の武将たちの選んだ品々が送られてきたのだった