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イケメン戦国〔瞳に魅せられて〕

第1章 甘味やの看板娘


椿に会ったその夜に
女将さんに安土に行きたいとお願いをした
しかし女の足で向かうには遠いため
女将さんは頷いてはくれなかった


『お久しぶりです信さん!』


女将さんに話をした数日後の昼下がり
また信さんが甘味やに顔を出してくれた


「やあ姫。久しぶりだね」


『姫ってわたしのことですか?』


「そうだよ」


『姫か~お姫様に憧れた時期はありましたけど
もうそんな可愛い年じゃありませんよ
それより、お団子食べますか?』


「いいや、今日はね姫を拐いに来たんだ」


意味がわからずに
ん?と小首を傾げ信さんを見た


「女将、俺が一緒なら構わないだろ?」


「その子はねあたしの娘じゃないんだよ
でもね大切な子にはかわりない
ちゃんと守っておくれよ」


いつの間にか後ろに立っていた女将さんが
わたしが現代から持ってきていた荷物と
小さな巾着を渡してきた


『女将さん?』


「これは葉月が今まで
ここで働いて稼いだお金だよ
それとこれはあたしからの選別だよ」


わたしの纏めただけの髪に蝶の簪をさしてくれた


「蝶は幼虫から成虫に美しく姿を変えることから
女性の美しさを表しているんだよ
他にもね、長寿って意味も込めらてる
葉月あんたも蝶のように美しく
そして長生きしておくれ」


『ありがとう女将さん
きっとまた会いに来るから
だから・・・だからさよならは言わない
いってきます!!』


「ああ、いっといで葉月」


ぎゅっと女将さんと抱き合ってから
信さんと店を後にした
村外れまで来ると二頭の馬の手綱を
握って立っている幸さんがいた


「遅い!さっさと出立しないと
夜迄に安土に着かないでしょうが!!」


「さあ姫
俺と一緒に逢瀬を楽しもう」


『逢瀬ではありませが
安土までよろしくお願いいたします』


先に馬に跨がった信さんがわたしを引き上げ
自分の前に横向きに座らせてくれた
ぶつぶつと文句を言いながら
幸さんも馬に跨がり安土へと馬を走り出させた


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