Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第6章 眼鏡と読書が趣味なんです。【沖矢昴】
一日の業務を終えて、図書館を出る。
近くのマンションを借りているから通勤は徒歩だ。
今日はスーパーで夕食の材料を買って帰る。
ひと通り食材をカゴに入れて、惣菜コーナーを通ってレジに向かおうとしていたら、また例の眼鏡のハイネックを見掛けた。
彼は何やら惣菜を品定めしているようで。
近所なんだろうか。
そりゃ、米花図書館に来るんだから割と近くなんだろうとは思ってたけど・・・
一人暮らしなのかな。
でもしょっちゅう図書館に来てて、家賃を払う収入はあるんだろうか?
自分から声を掛けるのはまだちょっと気が引ける。
そっと彼の後ろを通り過ぎて、レジ待ちの列に並んだ。
「奇遇ですね、さん」
背後から声を掛けられた。
振り向かなくても大方声の主は想像がついているけど。
「あ、どうも・・・沖矢、さん」
振り返って頭を少し下げる。
「夕食のお買い物ですか?」
「ええ、まあ」
「・・・それが食べたくて僕との食事を断った?それともどなたか一緒に食べる方がいらっしゃるんですか?」
「違うんです!すみませんでした・・・せっかく、誘ってくれたのに・・・」
「ああ、いいんです」
「あの、沖矢さんと食事するのは全く嫌じゃないんです。さっきはビックリしすぎちゃって・・・よかったら、また誘ってください!」
あー言えた!
沖矢さんもにっこり微笑んでくれて。
ちゃんと謝って本当に良かった。
ふと覗いた彼のカゴの中は惣菜と酒ばかりで。
野菜の類はほとんど見当たらない。
これではいつか身体壊すんじゃないか、この人。
「余計なお世話かもしれませんが・・・沖矢さん、野菜も少しは食べた方がいいですよ?」
「分かってはいるんですが中々ね・・・」
「今度私が何か作りますよ。ウチ来ます?」
「おや。それなら今度と言わず今日お邪魔しても?」
「今日ですか!?・・・それはまた急な」
「でも嫌ではないんでしょう?用事も無いようですし」
なぜ今日!とは思ったが、また断るのも気が引けるので了承する。
でもでも、よく考えたら家に恋人でもない男性をあげるって、どうなの・・・?
でも沖矢さんなら大丈夫そう?
ゆっくり仲良くなりましょうって言ってたことだし・・・
いやいや・・・
でもなぁ・・・