Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第38章 Top priority -最優先事項-【降谷零】
今でもたまに思い出す、警察学校の入校式でのこと……ハッキリと覚えてる光景。
「総代!降谷零!」 「ハイッ!」
入校前の試験でトップの成績を収めた者が“総代”となり、同期生を代表して挨拶をするらしいのだが、教官から名前を呼ばれ、快活な返事をし、壇上に登った私達同期の総代は…なんとビックリ、金髪色黒の男の人だった。
“フルヤレイ”というらしいその彼は、全科目オールAなんていう前代未聞の超優秀な成績を収めた人物らしかった。
正直な所、染髪って禁止だよね!?つまり地毛ならハーフ?ハーフって警察官になれるの!?なんて失礼なことをその時は思ってた気がする。
挨拶を終え壇上から降りてくる彼の…顔の造りは悪くないのかもしれないけど、金に近い明るい髪色にも、よく日に焼けているように見えた肌にも、軽薄そうな印象を受けた。
つまり、私が彼に対して抱いた第一印象は、全く良くなかった。
でも、同じ授業を受けたり、彼が友人達と喋っているのを聞いている内に…降谷零という人物へ対するイメージは180度変わっていったと言ってもいい。(もちろん良い方向にだ)
実にマジメで、勉強熱心、それに噂では結構優しいみたいで……友人達と笑い合う顔は子供みたいで可愛くも見え、かと思えば真剣に武術や逮捕術の訓練に取り組む姿は凛々しくて、格好良いと言っても差し支えなく……
自覚はしてなかったけどいつからか気付けば私はいつも彼を目で追っていたみたいだ……そんな私の視線に私よりも早く気付いたのは、同じく同期の萩原くんだった。
「ちゃんは、降谷ちゃんが好きなのかなー?」ってニヤニヤと私の顔を覗き込みながら話しかけてきて……
「何言ってんの!違うし!」ってその場は否定したものの、否定してみて自分の気持ちに初めて気付いたんだった。この、胸がきゅうぅぅ…ってなる感じ…多分、好きなんだろうって。
萩原くんとは何度も喋ったことはあったけど、その当時降谷くんとはまだ最低限レベルの会話しか交わしたことがなくて。
でもそれからは何かと萩原くんに変な気を回されて、降谷くんと同じテーブルで食事をとったり、彼を含めた何人かのグループで外にお酒を飲みに行くようにもなって……私と降谷くんは、いわゆる普通の友達のような関係になっていった。