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Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】

第36章 溢れた水は杯に返るのか【沖矢昴】


〈おまけのページ〉

と再会直前の沖矢さんの心の内です。






別れてからもずっとのことは頭にあった。思い出す頻度は年を追うごとに減ってはいたが……

東京に戻ると決まった時からは、また毎日のように彼女を思うようになってしまっていた。

何度も電話しようとスマホに表示されるの電話番号を眺めては…思い留まっていた。


元気にしているだろうか、仕事は上手くいってるだろうか……


あの時、“遠距離なんて考えられないし、別れよう”と言われ、僕はあっさりフラれた訳だが……東京に戻るとなれば、もう“遠距離”ではなくなる。この先は自分が大きなヘマでもしない限り、地方への転勤も無いだろう。もう一度やり直すことはできないのか。

しかしなんと言ってもあれから時間が経ち過ぎている。現在のに恋人がいたっておかしくない。

だがその相手と上手くいっていないのなら……もしくはそんな相手もいないのなら……




しかし何の行動にも移せないまま…東京に戻ってきて1ヶ月近くが過ぎた。

自分はこんなに情けない男だったか。相手だと、フラれたことが尾を引いているのか、どうしても弱腰になってしまう。

電話をして一言“会いたい”と言えばいいだけなのに。

の住んでいたマンションの近くを通ってみたり、の職場の近くや、が当時一人でも行っていた店で食事を取ったり…そんなことしかできずにいた。




しかしチャンスは突然訪れた。

昔が好んで行っていた飲食店で一人で夕食を取っていた所、そのが来店したのだ。

気付いた瞬間、驚きと嬉しさで箸を持つ手は止まり……しかし即座に顔を合わせる勇気が持てずに、身体ごと壁の方を向いてしまった。

以前よりも少し痩せたか…?仕事がキツいのか…?大丈夫なのか…?

話し掛けたくても、身体が動かない、声が出ない。

だがこれを逃せば次はいつ会えるかも分からない。

情けない自分とは今日で決別……

胸を張って、ともう一度、向き合う。










そして沖矢さんはに声を掛けるのでした。


最後までお付き合いくださり、ありがとうございました(^^)
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