Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第35章 ヒミツの約束【快斗/キッド】
音に細心の注意を払いながら、親父が残してくれた隠し部屋に入った。ここには、怪盗キッドとして活動する為のあらゆる物が備わっている。
まずはキッドの衣装を身に着け。そしてダミーの人形に、普段の俺っぽいカツラを被せ、その人形を抱えて自室に戻ってきた。
が眠るベッドに人形を慎重に差し入れ、頭まで布団を被せ。
そののすぐ横、ベッド際に座り込み、彼女の肩を揺らし、起こした。
「ん…ねてた……ふぇ?っ!?……き、き…きっど……え?!?」
「夜分遅くにすみません。どうか後ろの彼は起こさぬように」
「っ!?」
後ろをチラっと振り返る。隣に寝そべってんのが俺のダミーだとは気付いていないようだ。
「どうも貴女に呼ばれている気がしまして…」
「…呼んでない!……でも……あの……ずっとお礼は、言いたかった……ありがとう…」
「礼?」
「だって…その…快斗さん、と…付き合えたの…」
「願いが叶ったようで何よりです……でもそのことについてですが……実は私は何の手助けもしておりません」
「…?」
「貴女に会った後、たしかに黒羽快斗さんの調査は行いました。ですがそのとき、既に彼は貴女と、いいご関係になっていたんです」
「…キッドが魔法かけてくれたからじゃないの?」
「魔法?私は魔法使いではありませんよ?種も仕掛けもある奇術師ですから。貴女と彼が結ばれたのは、必然だったようです」
「うそ……?」
丸い目をぱちくりさせるが可愛いくて可笑しくて…吹き出しそうになるのを堪えながら、別れのセリフをなんとか紡いでいく。
“キッド”としてに会うのはこれで最後だ。
「ええ。もっと貴女は自分に自信を持った方がいい…そのままでとても魅力的なんですから……では私はこれにて失礼……Sweet dreams…」
「えっ…ぁ……」
ポケットに忍ばせていたスプレー缶の中身をに向けて噴射する。軽い催眠作用のあるものだ。
ゆっくりまぶたが落ちていき、は再び眠りに入った。
これで変な誤解は解けたか……
隠し部屋に衣装とダミーを放り投げ、再びベッドに入る。
またスースーと寝息を立てているを抱きながら、俺も眠りについた。
END