Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第35章 ヒミツの約束【快斗/キッド】
「…ッ!あっぶねー!ドコ見て歩いてんだよお前……」
「きゃ……っ!!えっ!?……っ!?」
「お…っと……だいじょぶか?」
「……!?…は、はい……」
「お前、1年か」
「はい…」
「ふーん……まあ……俺もたしかに悪かった……気ぃつけろよ」
「は、はい…っ」
「じゃーな!」
「はい…」
高校に入りたての頃、まだ慣れない校舎の中。
昼休みにお弁当を中庭で食べた後、たまたま廊下で担任に出くわし、次の授業で使うらしい謎の教材を職員室から教室まで運ばされていた私。
一体どうやって使う教材なのかサッパリ分からず、手に持ったものを見つめ頭を捻りながら歩いていたら、廊下の曲がり角から急に出てきた学ラン(を着た人)と激突し、私の身体は斜め後ろ方向へ飛ばされそうになった。
何が起こったのか瞬時には分からなかったけど……気付けば私はぶつかった男子生徒に背中を腕で支えられてて、身体は倒れてなくて…つまり、その人に正面から抱きかかえられてるような状態で。
しかも、目の前にはその男の人の顔面。(たぶん10センチも離れてなかった)
彼氏なんていたこともないし、こんなに近くで男の人の顔を見た経験も皆無な私の頭はフリーズ状態に……
なんとか体勢を立て直し、彼の腕も解かれたけれど、それでもまだ近い距離に心臓はバクバク、掛けられた言葉にも「はい」としか応えられなかった……
それだけ。本当にそれだけ。
でも、「じゃーな!」って去っていった時の彼の笑顔がどうにも眩しすぎて。
多分この瞬間に、私は人生初の一目惚れをしてしまった。
彼の履いていた内履きの色でひとつ上の学年の人だってことは分かったけど、それ以外の事は分からず。
それから数日は、ふわふわ、もやもやーっとした思いを胸に抱いていたのだけれど……
彼の素性が判明する日は急にやってきた。