Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第29章 寄せは俗手で【羽田秀吉】
大好きな秀吉と一緒に迎える初めての朝。本当ならもっと穏やかで甘いのが希望…だったと思う。
パッと起きて時間を確認した瞬間から私の中には甘い雰囲気はもう皆無。
腰は痛いわ眠いわ秀吉は中々離してくれないわの中、急いで自宅に帰り着替えて出社し、昼にはバレてしまう重大な事実を上司に打ち明けた。
途端に皆に大声でバラされ、質問攻めに合い……大忙しの一日となった。
「いつから付き合ってたの?」
「き、昨日から…」
「き?え!?えええ!?」
一日中何度も繰り返されたこの会話。みんなに驚かれたけど、一番ビックリしたのは私自身だと言いたい。
未だにもしかして夢だったんじゃ…なんて思うくらい……
でも、昼過ぎのワイドショーに秀吉が出てるのをテレビで見て……やっぱり現実なんだと実感する。
“太閤名人!三冠に加えてご結婚まで、ダブルでおめでたいですねー!ちなみに、お相手の方はどんなお方なんですか!”
“彼女は…昔からの友人で、ずっと好きだった人なんです。ここまで自分が将棋の腕を上げれたのも、彼女のおかげだと思ってますし…いつも明るくて、優しくて、可愛くて…料理も上手くて…”
“ノロケますねー!さぞ今はお幸せでしょう!”
“すみませんつい……そうですね。こんな幸せがあるのか、ってくらい、今は幸せですね”
聞いてて頬が熱くなってくる……加えて周りの皆からの好奇の視線が恥ずかしくてその場から逃げ出したくなる……だけど秀吉の喋ってるのも見たいんだし……ああ…この番組録画しておけばよかったなぁ……
腰の妙な痛みも、今は愛おしく思えるくらい幸せだ。
END
〈あとがき〉
タイトルの“寄せは俗手で”っていうのは将棋の格言で、寄せる時(攻める時)は凝った手順で行くのではなく、簡単で分かりやすい攻撃の方が有効な場合が多い、という意味だそうです。
それを恋愛に見立てて話の内容と絡めていきたかったんですが、出来上がってみたら、ベタな場所でのプロポーズくらいにしか絡められてなかった……!
情けない……でも秀吉とが幸せになったなら良し、ですかね(*´˘`*)♡
こんな所までお付き合い頂き、ありがとうございました。