Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第3章 降谷さんの緊急事態【降谷零】
ある日の明け方。
自分、風見裕也は、降谷さんを迎えに車を走らせていた。
本来なら降谷さんがするような仕事では無いと思うのだが、彼は今朝までとある潜入捜査を行っていた。
重要な情報を持っているとされる女性が無類のイケメン好きで、特に若い男に目が無く、ホストクラブに足繁く通っているらしく。
その女性に接近する最適人者として、急遽降谷さんに白羽の矢が立ったそうだ。
彼女の通うホストクラブに従業員として潜入し、気に入られるよう振る舞い、情報を引き出してくるのが今回の仕事だ。
その仕事終わりの彼を拾う予定の路地に、時間ぴったりに車を停めると、降谷さんが物陰から姿を現した。
フラ着いた足取りで、自分の車の後部座席になだれ込んできた。
「お疲れ様です!いかがでしたか」
「ああ・・・しっかり情報は、ここに・・・」
ポケットから出されたUSBメモリを受け取る。
降谷さんに指示を出した理事官に、自分が渡す手筈になっている。
車を出し、降谷さんの自宅に向かう。
すぐに車内に酒の匂いが充満し始めた。
後ろの降谷さんは、先程から妙な溜め息ばかり吐いている。
「失礼ですが・・・かなり酒を飲まれたようですね・・・」
「すまない・・・窓、開ければいいぞ・・・」
「すみません・・・失礼します」
運転席の窓を少し開けると、降谷さんも自身の座っている席の窓を大きく開けて外の風を顔面に受け出した。
相当酔っ払っているのかもしれない。
まあ、なんせホストクラブの仕事上がりだ。
しばらく無言で走り続けたが、急に降谷さんが思いもよらないことを言い出す。
「参ったな・・・僕としたことが・・・クスリを・・・盛られたかもしれない・・・」
「クスリですか!?では病院に」
「いや、さんの所へ・・・向かってくれ」
「さん、ですか・・・?」
「あの女・・・しつこくアフターに誘ってきたのはこういうことか・・・」
まさかとは思ったが・・・
彼は所謂媚薬を盛られたのかもしれないと察する。
頬がいつもより紅潮し、肩で大きな呼吸を繰り返しているのは酒のせいだと思っていたが違ったようだ。
「さんはどちらに」
「この時間なら・・・そろそろ家を出て、徒歩で事務所に向かっているはずだ・・・見つけ次第、拾え」
「は、はい!」