Cherry-pick【名探偵コナンR18短編集】
第25章 夏の誘惑*前編【降谷零】
どうしても仕事行儀になってしまうので、お互いを“降谷さん”、“さん”と呼び合うのも今夜はやめることになった。あと彼から付け加えられたのは、“敬語もなるべく無し”。
降谷さんこと、零(と呼ぶことになった)は、会社の割と近くで一人暮らしなんだそう。
ほかにも動物が好きだとか、セロリが好きだとか、今まで知らなかった所が色々見えてきた。
こんな風に話せるのは、もちろん今だけ……だけど一気に距離が縮まったような気がして、思いを寄せている私としては、内心すごく楽しい。
「零って休みの日はいつも何してるの?」
「起きたらランニングだろ……帰ってきて筋トレして、シャワーして、掃除に、仕事の情報収集と……あとは料理か」
彼の走ってる姿、シャワーを浴びる姿、料理をしてる所……映像が勝手に脳内で再生される……なんかいい。
「へえ……料理もできるんだ」
「それなりにだけどな。は?休みの日は何してるんだ?」
「私なんてそれに比べたらだいぶグーたらしてますよ……ゆっくり起きて、遅い朝ご飯食べて、その後はその日次第かな……」
「彼氏とデートとか?」
「デートかぁ……いたらしてるんでしょうね」
降谷さんがデートしてくれたらいいのにー……なんてコッソリ思いながら、手にした自分のグラスと、それから降谷さんのグラスへと視線を移す。
「あっごめん、コレってセクハラになるのか?」
「まさか!全然、大丈夫」
「嫌だったら言ってくれよ?」
「だからぜーんぜん、大丈夫ですって……業務時間外だから!」
中々やっぱり仕事モードからは抜け出せそうで抜け出せない。と思っていたけど……
お酒が進むにつれて、だんだんそうでもなくなってきた……?
「じゃあ……には彼氏はいないんだな」
「いないですね……零こそ、誕生日に私なんかと二人でいいの?」
「いいよ?こんな可愛い子と二人で出掛けてるんだから」
「な、え!?何言ってるんですか……」
隣の彼がカウンターに肘をついて、その上に顎を乗せてこちらを見ている……見たことのない、何かを含んだような笑顔で。
心臓に何か突き刺さったかと思う程、ドキッとしてしまった。
「何って、そのままだけど。業務時間外だからこういう発言もOKなんだろ?」
「そ、そ、それは……」